猫ぐらし2 ねこったけ家族

愛猫3匹との日々を紹介します

 № 28  エゾセンニュウ                2023年6月16日

 

 6月に入り、ようやく初夏の訪れを感じるようになりました。私の住む地方は北海道の南の方に位置しますが、この時季海岸からの霧が発生しやすく(海霧)、気温が上がらず肌寒いのです。つい4、5日前まで夜に石油ストーブをつけていました。今年は異例なほど春の訪れが早かったのに、夏は海の上で足踏みしたようです。

 ですが、今時期、夜になると近くの公園や林の方から盛んに野鳥のさえずりが聞こえます。6月から7月にかけて繁殖期を迎える「エゾセンニュウ」(蝦夷潜入、仙入)です。その名の通り、夏場北海道に生息する渡り鳥で、全長18センチ、全体的に赤褐色の容姿ですが、なかなか昼間に姿を見ることはできず、夜になると結婚相手を求めて鳴きます。この愛のさえずりが「じょっぴんかけたか?」と聞こえるのです。「じょっぴん」は北海道方言で「鍵」のこと。私の祖母(明治生まれ)や母親(85歳)は、出掛ける際に「じょっぴんかけたかい」と使っていました。今の若い世代はほとんど知らないだろうし、使わないでしょう。「じょっぴんかけたか」と聞き取れない時もあって、「なんか下手な新人さんがいるね」「ただ今特訓中なんじゃない」と、夫と笑っています。

 今春の異変がもう一つ、猫を飼い始めて20数年経ちますが、毎年庭のデッキに現れていた野良ちゃんが今年は一匹も来ません。ふらりと立ち寄る野良ちゃんをはじめ、近所の猫ばぁちゃんところの飼い猫さんたちが遊びにきて、多い時で5、6匹を数えました。わが家の初代猫「ピーちゃん」が毎日外回りをするためデッキにお皿をおいてご飯をあげていたので、来たらおすそ分けしていました。ここ2、3年は片足のない「クロッケ」と片方の目の周りが黒ブチで伊達政宗みたいな「マサムネ」が交互に来ていたのに、昨年末からぱったりと姿を見せなくなりました。厳しい冬を越せなかったのかと思うと胸が痛みます。だからわが家で朝昼晩と三食昼寝つきで過ごし、天寿をまっとうして虹の橋を渡ったのだと思うことにしています。

 娘が3歳の頃、当時飼っていた猫(カナ)に絵本の読み聞かせをしていました。それは一番のお気に入り「きんぎょがにげた」(五味太郎作)です。ソファで丸くなっているカナに「わかる?ここだよ」と無邪気に話しかける姿が懐かしく思い出されます。デッキに遊びに来る野良ちゃんにも同じように絵本を広げ、ガラス越しに読み聞かせをしていました。

猫ばあちゃん宅では家猫2匹と半外猫4匹がいて、親子で連れ立って来たり一匹で来たりで、時々帰宅が遅いと、おばぁちゃんが心配して「アンタのとこばぁ、うちのさいってないかい?」と訪ねてきます。その秋田訛りが耳に心地よく、娘の引っ越しで青森に行った時も地元の人の会話が温かくて、かわいらしく「土地の言葉っていいな」と感じました。また聞きたいなぁ­。青森に行きたいな。娘に会いたいな~。古いアルバムを眺めていたら、私以上に夫が恋しがっていました(笑)。当の本人は学生生活を謳歌し、ホームシックではなさそうです。夜に連絡LINE通話をしていて(もはや定時連絡)、娘が「チャコ」と名を呼ぶと、チャコは聞き耳を立てスマホに近寄ってきます。ちゃんと娘の声を覚えているのでしょうね。姿は見えないけれど、声は聞こえる。エゾセンニュウのようです。

 

       

       「きんぎょが にげた」を読み聞かせ カナも真剣な表情(笑)

       

       

       庭に遊びに来ていた野良ちゃんにもガラス越しに読み聞かせ